2019年3月1日より、アップリンク渋谷で公開中の映画『シスターフッド』。ドキュメンタリーとフィクションが融合する斬新な作品です。

東京に住む若い女性たちの生き方をモノクロで表現した本作品の撮影期間は、なんと4年。

本作品の西原孝至監督とは、前作のドキュメンタリー映画『もうろうをいきる』でご縁が繋がりました。

淡々とした目線で、盲ろう者の日常をあたたかく描いた前作にとても共感し、「さわる時計 Bradley」を監督へプレゼントしたところ、「『シスターフッド』の脚本にこの時計の話を入れた」との連絡がきました。

私も撮影現場へお邪魔したのですが、この時計を話題にしたシーンの撮影が結構長かったので、「まぁ、編集されて短くなるだろう」と思っていました。ところが、完成した作品を観ると撮影したままの尺で編集されていてびっくり。

映画に時計を登場させてもらったお礼も兼ねて(笑)、この作品について聞きたかったことを西原監督へインタビューをさせていただきました。


西原孝至監督(写真提供:本人Facebook)

1. はじめはドキュメンタリーとフィクションをひとつにした作品だと聞いて、どういう風に繋げるのかまったく想像できませんでした。実際試写会で作品を見たら‘なるほど、こうやって繋げたんだ!’と感心しましたね。
なぜ、この作品でドキュメンタリーとフィクションをひとつにしようと思ったのでしょうか?きっかけとなった作品や出来事はありますか?

西原:もともとは東京という都市に興味があり、2015年からヌードモデルの兎丸愛美さんと、歌手のBOMIさんの撮影をはじめました。

世界でも有数の大都市である一方、いま、特に若い人たちにとって非常に生きづらい街なのではないかという思いが漠然とあり、様々な境遇のもと、東京で暮らす女性たちの生活をポートレートのように記録することを始めました。

同時に、撮影を重ねる中で2017年に起きた#MeToo運動を日本でも目の当たりにし、女性たちが世界中で既成の価値観に対して声を上げた動きに、私も男性ですが同調できればと思いました。

複雑な世界を単純化するのではなく、多様性のある複雑なまま映画で描いてみたいと思い、それにはドキュメンタリーとフィクションを混在させる方法が合っているのではないかと考えたのです。


(写真提供:『シスターフッド』ホームペジ)

2. なるほど、それで女性の“生きづらさ”について着目されていたのですね。作品でも登場人物がフェミニズムについて語る場面も出てきますが、男性である西原監督が、なぜこのテーマで作品を創ろうと思ったのですか?

西原:私は男性ですが、男性からみても今の日本は男性中心の社会として設計されていると思います。そのことに対する違和感は昔から持っていました。

例えば私の母親は専業主婦でしたが、結婚を機に家庭に入ったのですが、おそらくまだまだ働きたかったのではないかと思います。
昔からある、男性が外で働いて女性が家庭を守るという価値観の中、そういう思いをした女性は多いのではないでしょうか。

韓国で大ヒットし、日本でも翻訳本が出版された小説の「82年生まれ、キム・ジヨン」で描かれていることは、まさに日本でも当てはまると思います。

「フェミニズム」は女性だけを解放する運動や言葉ではなく、すべての人が生きやすい社会にするための運動なのではないかと私は考えています。

性別に関わらず、例えばLBGTQの方、障害のある方、それぞれ個別の人間が抱えている思いを、その人が自分らしく生きていける社会を築いていくことが大切だと思います。
男性である私がこのテーマに取り組むことで、「フェミニズム」をいう考え方を一人でも多くの方に知ってほしいと思いましたし、「フェミニズム」を女性だけではなく、みんなのものにしたいと思いました。

3. 作品には東京で暮らす複数の女性が登場しますが、なぜ「若い女性」の生き方にフォーカスしたのでしょうか?

西原:東京は資本主義が発達した大都市ですが、今の10代・20代の若い世代には、資本主義に傷ついている人も多いのではないかと思います。

全てが効率化の元、社会のシステムが優先され、個人の思いや感情が置き去りにされているのではないかと、この街で暮らしていると感じます。

特に、若い女性たちは様々な社会からの圧力の中で生きているのではないかと思い、彼女たちの思いを聞いてみたいと思ったからです。


(写真提供:『シスターフッド』ホームペジ)

4. 映画の中で「さわる時計」の話が出てきますが、なぜ映画に時計のシーンを入れたのですか?

西原:さわる時計は、以前に目と耳の両方に障害のある盲ろう者ののドキュメンタリー映画「もうろうをいきる」を制作した際に知りました。

この映画も、多様性を描ければと思っていたので、バリアフリーという概念を紹介できればと思い、小道具として使わせていただきました。

弁護士がつけている設定ですが、ある人にとっては高そうにみえた時計が、実はプレゼントでもらったさわる時計だったという、そのギャップも面白いのではないかと思いました。

5. 時計のご紹介、ありがとうございます。この映画を観て、それぞれの生き方や幸せについて語る映画だと思いました。監督はどういう状態、何をしている時に幸せを感じますか?

西原:自分の幸せについて考えると難しいのですが(笑)「その人が自分らしく生きていることを実感できているとき」が幸せなのではないでしょうか。

自己肯定感や「自分は自分でいいんだ」という感覚を持って生きていければ、それが幸せに繋がるのかなと思います。

でも今の社会はそれを阻害することが多いと感じていて、だから私の場合は映画や表現などを通して、社会にアプローチしたいと思っています。


舞台挨拶する監督と出演者たち(写真提供:Motiongallary)

映画「シスターフッド」 https://sisterhood.tokyo/
出演:兎丸愛美 BOMI 遠藤新菜 秋月三佳 戸塚純貴 栗林藍希 SUMIRE 岩瀬亮
監督・脚本・編集:西原孝至
撮影:飯岡幸子、山本大輔 音響:黄永昌 助監督:鈴木藍
スチール:nao takeda 音楽:Rowken
製作・配給:sky-key factory
2019 / 日本 / モノクロ / 87分 / 16:9 / 5.1ch